ヒアルロン酸の持続期間はなぜ長い?
ヒアルロン酸の持続期間が長い理由
このページではヒアルロン酸の持続期間についての私見をご紹介いたします。 長年の経験による見解ですので、参考程度にしてください。
一般的に、注入されたヒアルロン酸は(種類にもよりますが)6か月~12か月で吸収されて消失すると言われています。
実際にこのような短期間で吸収されたと思われる症例も多々あるのですが、何年も変わらず残存している症例も多いです。
この理由が「被膜形成」だと考えています。
身体には体内の異物に反応する働きがあります。
たとえばシリコンプロテーゼを挿入してしばらくすると、その周りに線維性被膜というのができます。
異物であるシリコンプロテーゼと自身の組織との間に被膜という隔壁を作るのです。
美容外科の分野では、固体のプロテーゼの被膜形成については、広く知られている事実です。
ヒアルロン酸も身体にとっては異物に相当するため、被膜形成を起こしても不思議ではありません。
実際に、被膜が観察されている例もあります。⇒(こちら:ヴェリテクリニック名古屋院院長李政秀先生のブログより)
ヒアルロン酸の吸収には体内の酵素が関係していると考えられています。
注入されたヒアルロン酸に組織中の酵素が作用してヒアルロン酸を分解吸収するのです。
被膜形成を起きると、ヒアルロン酸は組織から隔絶されます。
つまり酵素が作用しにくくなるので吸収が大幅に遅れます。
このことが、予想よりはるかに長い持続期間に繋がるものと考えられます。
被膜形成自体は身体の自然な反応であり、特に悪いことではありません。
豊胸手術においては、被膜硬縮(被膜が硬くなり縮む現象)が最もポピュラーな合併症として有名ですが、現在までのところ顔へのヒアルロン酸注入において、被膜が硬くなって困るといった例は見たことがありません。
シリコンプロテーゼとヒアルロン酸では、できる被膜の質が違うのかもしれません。
また、ヒアルロン酸が吸収され、なくなってしまえば被膜自体も吸収消失されるのが普通です。
つまり被膜だけがずっと残ってしまい不都合を起こすという心配もほとんどないと考えられます。
これらのことより、ヒアルロン酸の効果が好ましい状態であれば、この被膜形成により吸収が遅れ持続期間が長くなることは、患者様からすれば歓迎すべきことだといえます。
しかも、ヒアルロン酸には、専用の溶解注射があります。何か問題が起きるようなことがあれば(滅多にそのような状況にはなりませんが)、溶解してリセットが可能です。
このようなヒアルロン酸の被膜形成ですが、経験により言えることは、いつでもどこでも起きるわけではないということです。
被膜形成を起こしやすい部位、注入の深さ、注入方法があるように思えます。
ちなみにヒアルロン酸以外の皮膚充填剤において、被膜形成によるこのような持続期間の大幅な延長を実感したことはありません。
どんなに持続期間が長いと謳われている皮膚充填剤でも、被膜形成を伴ったヒアルロン酸には適わないのではないでしょうか。(使用を禁じられている非吸収性のものは除く)