老人性しみ(老人性色素斑、日光黒子)のレーザー治療
老人性しみ治療の実際
Qスイッチルビーレーザーによるしみ治療
~ピンポイント照射でしみを確実に取る
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治療前 -
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かさぶた -
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10日後
老人性しみに対する、Qスイッチルビーレーザー治療前後の写真です。
しみはとても大きく、厚みがあり若干の膨らみがあります。
このようなしみは、フォトシルクプラスなどのIPLで取るのは難しく、結局Qスイッチルビーレーザーで治療することになりますので、最初からQスイッチルビーレーザーを選択するのがベストです。
治療後に厚みのあるかさぶたができますので、シールを貼るか、ワセリンを塗布して保護します。
かさぶたは1週間ほどで自然に取れて、新しいきれいな皮膚になります。
炎症後色素沈着を起こす可能性があり、外用薬でアフターケアをします。
Qスイッチルビーレーザーを適切に照射すれば、厚みのある大きなシミでも1回の治療でほとんど取れているのが分かります。
フォトシルクプラスによるしみ治療
~くすみを取り全体的にしみを薄くする
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フォトシルクプラス治療前 -
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フォトシルクプラス治療後
老人性しみに対するフォトシルクプラス1回治療前後の写真です。
治療後薄いかさぶたができることがありますが、治療直後からメイクも可能で、それほど目立ちません。
Qスイッチルビーレーザーほどすっきりはしませんが、全体的なくすみは改善し、しみもかなり薄くなっています。
老人性しみに対するフォトシルクプラス1回治療前後のダーモスコピー写真の比較です。
しみの色素が明らかに薄くなっていることの他に、しみの周りの細かい色素(小さなしみやくすみ)が取れているのが分かります。
老人性しみの特徴
もっとも一般的な、いわゆる「普通のしみ」です。
メラニン色素を多く含む異常な角層細胞の塊です。
老人性色素斑、日光黒子、日光性色素斑、脂漏性角化症(老人性イボ)の初期病変など、いろいろな呼ばれ方をしています。
紫外線や老化が原因と言われていますが、原因は完全には解明されていません。
紫外線が原因のひとつなので、日光が当たりやすい露光部にできやすいというのが一般的な認識ですが、ときに太ももやふくらはぎなど、日光があまり当たらない部分にもできます。
通常、手のひらた足の裏など、毛のない部分にはできません。
好発年齢は20代後半~30代からが多いですが、まれに10代や20代前半でもできることがあります。
10代や幼少期に出現したものでは扁平母斑(茶アザ)との鑑別が重要です。
色や大きさは様々ですが、だいたいのものが円形に近い形をしており、比較的明るめの茶褐色である場合が多く、境界がはっきりしているものが多いです。
通常平らに見えますが、よく観察すると少しだけ膨らんでいるもの(老人性イボへの移行)や角質のざらつきが見られることがあります。
ときに一時的な炎症を起こして赤みやかゆみがあるもの、色が明るい茶褐色ではなく、くすんだグレー色のものを見ることがあります。
これは、扁平苔癬様角化症(LPLK)といって、老人性しみに何らかの免疫反応(炎症)が加わった結果だと考えられ、自然に消失することもあると言われています。
色調は異常に濃いもの、色調の濃淡差が大きいものに関しては、悪性黒子などの悪性疾患との鑑別が必要になるため、レーザー治療前には、ダーモスコピー所見や状態によって、治療に適しているかを判断します。
レーザーなどの治療によって取れやすいタイプのしみですが、原因がはっきりしていない以上、再発の恐れがあります。
【形について】
円形に近い形が多いです。
時に、少し不整形に見えるものもありますが、よく観察してみると複数の類円形が重なって不整形になっている場合が多いです。
逆に、いびつな形をしている場合は老人性しみ以外の可能性を考える必要があります。
【色について】
比較的明るい茶褐色の場合が多いですが、色の濃さはさまざまです。
肌の色とほとんど変わらないような薄いものからホクロに近いような焦げ茶色のものまであります。
時々、くすんだグレー色~紫色で、ぼんやりと見えるものがあります。
この色は、メラニン色素が真皮(皮膚の深い層)に存在することを示唆しており、病態としてはADMに近いもの、もしくは老人性しみに免疫反応が起こっている扁平苔癬様角化症などが考えられます。 (イラストにも色の違いを表現してみました)
【表面の質感】
一見すると平らに見えますが、ダーモスコープなどでよく観察すると、周囲の皮膚より若干盛り上げっていたり、角質が厚くなりきめが乱れてざらついていることが多いです。
肉眼的には、少しマットな質感に見えたり、メイクの「ノリ」がその部分だけ他とは異なるというものです。
この特徴は他のしみでは見られないことが多く、老人性しみと他のしみを見分ける有効な判断材料になります。
これは、老人性しみの異常な角層細胞の集積や表皮ターンオーバー(代謝)の異常による角質の肥厚を表しています。
【経過の典型例】
老人性しみの典型的な経過は、いつの間にか出現し、ゆっくり大きくなり濃くなるというものです。
中には脂漏性角化症(老化によるイボの一種)に移行していくものがあり、この場合はゆっくり膨らみます。
通常は痛みやかゆみ、赤みなどの炎症症状はありませんが、ときどき例外があります。
普通のしみだったものに、比較的急に赤みやかゆみなどの炎症所見があらわれ、その後炎症が治まれば色調がグレー色に変わるケースです。
これは典型的な老人性しみの経過と大きく異なり、老人性しみに免疫反応が起きた扁平苔癬様角化症を疑います。
老人性しみの治療
治療おすすめ度★★★★★
治療目標により治療法が異なります
ピンポイントで消したい⇒Qスイッチルビーレーザー
薄くなる+全体的な美白効果⇒フォトシルクプラス
Qスイッチルビーレーザーとフォトシルクプラスの併用がベスト!
老人性しみを消すにはQスイッチルビーレーザーが必要
老人性しみを消すのに最も確実な方法はQスイッチルビーレーザーを使用する方法です。
このレーザーは、適切に照射されれば、メラニン色素を多く含む異常な角層細胞の塊(これが老人性しみです)を一度に破壊できる可能性のある高いパワーを持っています。
したがって、Qスイッチルビーレーザーの場合、治療回数は通常1回のみです。
Qスイッチルビーレーザーの治療を数回繰り返すという説明を目にすることがありますが、当院ではなるべく1回の治療で済むように照射をします。
ただし、このとき発する熱は比較的強いため、老人性しみが除去された直下の正常な皮膚も少し熱ダメージを受けることになります。
しみをきれいに消すには、この熱ダメージに対するアフターケアが重要になります。
レーザー後の皮膚は、摩擦や紫外線、化粧品など外部からの刺激に対して非常に敏感になった状態です。
このような皮膚にさらなるダメージが加われば、傷跡や色素沈着を残してしまう可能性もあります。
もともとあったしみが消えたとしても、これでは治療の意味は少なくなってしまいます。
レーザー治療後のアフターケアについて
治療後の患部はダメージを受けた状態なので、特殊なシール(ガーゼや絆創膏ではありません)を貼る方法、ワセリンを使用する方法などを用いて外部の刺激から保護するのがベストです。
皮膚は1週間以内に回復し、メイクなどの通常の扱いが可能になります。
治療後2~3週間経過すると、しみが消えた患部に色素沈着(炎症後色素沈着、戻りしみ)を起こすことがあります。
つまり、しみが一度消えてなくなったのに、またしみが再発したかのように茶色の色がつくことがあるということです。
これは老人性しみとは全く別物であり、しみの再発でもありません。
ケガの跡がしばらく経って茶色くなることは、日常生活上でよく経験することですが、これと同様の現象です。
この炎症後色素沈着(戻りシミ)は、通常は数か月、長くても1年以内に肌の正常な色素代謝によって、自然消失することが多いです。
しかし、元々が老人性しみがあった患部は正常な色素代謝を担う角層細胞に異常があった部分ですので、色素沈着が自然消失しにくいことがあります。
このような色素沈着が残りやすい肌の状態だったから、老人性色素斑が発生してしまったとも言えます。
そのため、当院では炎症後色素沈着(戻りシミ)が定着して残ってしまわないよう、またせっかく消したしみが再発しないよう、外用薬を中心としたアフターケアをお勧めしています。
患部になるべく刺激(紫外線や擦る刺激など)を与えないこと、適切な方法で外用薬を使用することにより、治療後に患部をそのまま放置する場合よりも、しみがきれいに消える可能性が高いと考えています。
・しみのレーザー治療後のアフターケアについて詳しく知りたい
Qスイッチルビーレーザー治療を繰り返さないのはなぜ?
ひとつの理由は、繰り返す必要がない場合が多いからです。
老人性しみの場合は、病変部が比較的浅い層にありますので、Qスイッチルビーレーザーを適切な出力で照射すれば、多くの場合は1回の治療で除去でき、残存することが少ないです。
二つ目の理由は、リスクを避けるためです。
Qスイッチルビーレーザーなどのいわゆるしみ取りレーザーによる治療後は、炎症後色素沈着(戻りシミ)が起きることがありますが、適切なアフターケアで軽快することが多いです。
しかし、まだ炎症後色素沈着が残存している状態で、再照射を行った場合、稀ではありますが瘢痕化や白斑化などの重大な合併症を起こしてしまうことも考えられます。
そして、老人性しみの残存と炎症後色素沈着の見分けはとても難しいです。
つまり、再照射は炎症後色素沈着への照射になってしまう可能性があるということです。
したがって、老人性しみに対するQスイッチルビーレーザーの治療は、適切な出力で照射し、1回の治療で完全除去を目指すことがとても重要だといえます。
肝斑が合併していてもQスイッチレーザー?
肝斑自体に対しては、Qスイッチルビーレーザーなどのしみ取りレーザーは禁忌ということになっています。
レーザーを照射しても肝斑は根本的に改善せず、レーザーの刺激によりある程度の期間、濃い色素沈着を起こすことが多いです。
つまり、治らないのにある程度の期間、色調が濃くなるだけで、マイナスはあってもプラスの要素がないからです。
しかし、当院では、肝斑が合併している場合でも、老人性しみの部位・境界が分かれば、肝斑の状態を把握したうえで、Qスイッチルビーレーザーによる治療を行うことがあります。
(肝斑の中にある老人性色素斑の特定はなかなか難しいですが、経験を積み、コツをつかめば十分に可能です。)
逆に、肝斑が合併する老人性しみには、Qスイッチレーザー以外の治療法は有効ではないと考えています。 (理由はとても複雑なので文章で伝えるのは難しいです。診察時にお尋ねください。)
肝斑の領域の中にある老人性しみに対してQスイッチルビーレーザーを照射した場合、肝斑にとっては強い刺激となるので、治療後に濃い炎症後色素沈着を起こす可能性がありますが(実際には少ない)、しっかりアフターケアできれば、時間の経過とともに問題なく軽快することが多いです。
フォトシルクプラスは全体的な印象を改善します
フォトシルクプラスは、単波長のいわゆるレーザーではなく、たくさんの種類の光を含んだ光治療器(IPL)です。
Qスイッチルビーレーザーは老人性しみを消すことのみに特化した方法ですが、フォトシルクプラスは老人性しみの改善だけではなく、全体的なくすみや色むら、ニキビ跡の赤み、ハリ感、つやの改善など、肌をきれいにするための幅広い効果を出す設計がされています。
しかも、フォトシルクプラスは、老人性しみの治療においてQスイッチルビーレーザーほどの強い反応を起こさないので、皮膚のダメージが少く、治療後に生じる可能性のあるかさぶたも薄いため、治療の跡が目立つことは少なく、直後からメイクも可能(ダウンタイムが少ない)であり、特別なアフターケアも不要なので、気軽に受けることができます。
フォトシルクプラスは、しみのメラニン色素に効率的に反応する特殊な光(UPL:IPLの中でも特にメラニン色素に反応がよい光)を使っているので、適切に照射すれば、老人性しみに対する反応は抜群であり、かなり薄くすることができます。
色が濃く形がはっきりした小さなしみは、フォトシルクプラスでも除去できる可能性があります。
ある程度大きなものや色の薄いしみは、フォトシルクプラスを最大出力で照射しても除去は難しいです。フォトシルクプラスの光はメラニン色素に反応しますので、色は薄くなりますが、完全に取れるというほどの反応はありません。取れたように見えることもありますが、実際には老人性色素斑の異常な角層は残存しているので、再発しやすいです。
フォトシルクプラスでどんなしみでも消えるのか?☞NO
老人性しみでも、ある程度大きなものや色の薄いものは、フォトシルクプラスを最大出力で照射しても除去は難しいです。
フォトシルクプラスの光はメラニン色素に反応しますので、色は薄くなりますが、完全に消えるというほどの反応はありません。
消えたように見えることもありますが、実際にはしみの異常な角層は残存しているので、Qスイッチルビーレーザーに比べると再発しやすい印象です。
老人性しみの正体である異常な角層細胞を完全に除去するには、相応の出力が必要ですが、顔全体を照射できるよう設計されたフォトシルクプラスはそこまでの出力が与えられていないからであり、逆にマイルドな出力に抑えられているので、顔全体に照射できるとも言えます。
これはフォトシルクプラスを含めたIPLに限らず、ダウンタイムを伴わないとされるレーザー治療全般(レーザートーニングなど)にも言えることだと考えています。
仮にダウンタイムを伴わない治療で老人性しみを消すことができるなら、ダウンタイムを伴う治療など誰もやりませんので、Qスイッチルビーレーザーなどの治療は遠い昔に絶滅していたことでしょう。
しかし、現実には、老人性しみの治療におけるQスイッチルビーレーザーは、現在においても必要不可欠な現役の治療です。
Qスイッチルビーレーザーがないと消すことのできない老人性しみが多いからに他なりません。
IPL治療を何度か受けたことのある方なら実感されているはずです。
そもそもフォトシルクプラスなどのIPLは、全体的な美白・美肌のために開発された機器であり、ピンポイントのしみを完全除去する目的で開発されているわけではないと考えています。
そのかわり、治療後のお肌のダメージが少なく、厳密なアフターケアなどは必要ありませんし、肌全体がきれいになり、しみが出来にくい肌質にすることができるのです。
フォトシルクプラスはメリット・デメリットを理解して受けることが重要です
“大きい老人性しみを消したいという希望で、何十回もIPLを繰り返してきたがだめだった”という事例をしばしば目にします。
このようなことは、希望する治療目標と治療方法のミスマッチから起きます。
どんな治療もメリット・デメリットをよく理解して選択する必要があります。
・しみを薄くできる
・ダウンタイムなし、治療直後より洗顔、メイク可能
・特別なアフターケア不要
・顔全体をくまなく照射できる⇒くすみ、色むら、細かいしみにも対応可能
・治療を繰り返すことにより、肌の代謝が良くなり、美白・しみ予防可能
・熱作用によりコラーゲン産生⇒はり、小じわ、毛穴の改善も期待できる
・ヘモグロビン(赤)にも反応⇒赤ら顔やニキビ跡の赤みに有効
など
・しみは薄くなるが残るものも多い
・Qスイッチルビーレーザーに比べるとしみが再発しやすい
・1ショットの照射野が大きく、ピンポイントの治療には不向き
・治療できない部位がある(上まぶたなど)
など
実際の治療プラン~何をどの順番でやればいい?
患者様の様々な条件によって最適なプランは変わってきます。 お肌の状態を診させていただき、患者様のご希望やライフスタイルをお伺いして、よく相談させていただき、一緒にプランを立てます。
それぞれの治療の特徴のまとめ
Qスイッチルビーレーザー
⇒治療により、形がはっきりしたしみが消える可能性が高いが、細かいものや、全体的なくすみ、色むら、肌質の改善には不向き。 ダウンタイムあり。
フォトシルクプラス
⇒全体的に散在する細かいしみやくすみ、肌質改善に有効。ピンポイントの高出力照射には不向き。パワーは限られているので、大き目のしみは薄く残ることが多い。ダウンタイム少ない。
ケース① 大小さまざまな大きさのシミが混在
・フォトシルクプラスで数回治療
⇒全体的なくすみや細かいしみが改善、大き目のしみは薄くなるが残る
⇒残ったしみが気になるならQスイッチルビーレーザーで治療
・Qスイッチルビーレーザーで治療
⇒ある程度の大きさと形のあるしみが取れる
⇒お肌を数か月休める必要があります
⇒全体的なくすみや美白、しみ予防にフォトシルクプラスを
ケース② 単発の大きなしみを早く消したい
・Qスイッチルビーレーザーで治療
⇒大きなしみは再発もしやすいので外用薬でアフターケアをしっかり
ケース③ 肝斑と老人性しみが同部位に混在
・あらかじめトラネキサム酸内服で肝斑を治療
⇒老人性しみがはっきりしていれば、Qスイッチルビーレーザーで治療
※肝斑が濃い場合は、トラネキサム酸内服やフォトシルクプラスで肝斑をある程度治療してからQスイッチルビーレーザー治療タイミングを考慮する。
老人性しみの治療リスク(副作用・合併症)
- 治療後の赤み・痛み・腫れ・かさぶた(通常は一時的)
- 色素残存⇒アフターケア不足などによる色素沈着の定着、ADM・ホクロ・ニキビ跡の色素沈着、反応不足
- 瘢痕化⇒通常以上の強いダメージを受けた場合
- 濃い炎症後色素沈着⇒肝斑の存在や体質など
- 脱色素(白斑化)⇒炎症後色素沈着への照射、短期間での再照射や高出力照射
- 光アレルギー症状
- やけど(かさぶた・水泡・色素沈着・瘢痕)やくすみの悪化
- 肝斑の悪化
- 再発